大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和35年(く)78号 決定 1960年9月17日

少年 C(昭一六・四・三〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、本少年は昭和三一年三月中学校を卒業以来引続き姉婿の経営するメリヤス製造工場に工員として真面目に働き、たまたま昭和三五年六月初R会の会長○村○美から同会に入会を迫られ、躊躇したが、友人も入会するし、これを拒否すると殴られたりするので、やむを得ず入会し、銀色のバッチを渡されて幹部に推せんされたことを知り、心中秘かに怖れていたのである。かような次第で本件非行も会員に呼び出されて行動を共にしたに過ぎないので、入会さえしなければかような結果にならなかつたと後悔し現在R会も解散し、再びがような非行をしないことを誓つておる。又少年は自動車学校に通い普通自動車の運転免許の資格を得ており、昭和三三年九月頃保護観察に付されているが、保護司の宅を毎月一回必らず訪ねていたので、保護司においても本件を知り事の意外に驚き、監督の不行届を詑び、今一度保護観察に付される場合には必ず保護監督を引受ける旨申しており、両親はもとより附添人においても保護司及び家族と協力して保護監督したいので、今回に限り重ねて保護観察に付して貰いたいというのである。

よつて関係記録を精査し案ずるに、少年の本件非行の原因、態様、回数及び非行性、殊は本少年は昭和三四年一月二一日原裁判所において強姦未遂、強制わいせつ、暴力行為等処罰に関する法律違反、恐喝、傷害保護事件により保護観察に付せられ、【その観察中にもかかわらず、反省改悟することなく、前記○村○美の勧誘によりいわゆる暴力団「R会」に入会して幹部となり、不良交友を続け、本件非行を繰り返し、家庭の十分な保護能力も認められないこと、その他記録に現われた諸般の情状に徴すると、所論の事由を参酌しても、最早や在宅補導によつては到底本少年の健全な育成を期待し得ない。従つて原決定の中等少年院送致の措置は相当であつて、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条により、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 山本武 判事 三木良雄 判事 古川実)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例